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『同期のサクラ』 ~じわっと涙があふれてくる理由を誰か教えて欲しい~

今宵、どんなドラマを描こう 第3回

ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなどの肩書きを持つ筆者・小林久乃。本人が「幼少期からドラマオタクだ」と豪語するほど愛するテレビドラマの見どころについて語る。最新放送から、著書『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(11月29日(金)発売/KKベストセラーズ刊)の読者にぜひ見てほしい恋愛、結婚、女性の生きかたに関する過去作まで、週1イチ更新。読めばドラマが見たくなる、何か自分に衝動が起きるコラムをどうぞ。

実直、素直、正直。この言葉の意味を反すうする

<あらすじ> 

『同期のサクラ』
日本テレビ/毎週水曜 夜10時放送

“2009年、春。「故郷に橋をかけたい」という夢を掲げた北野桜(高畑充希)は大手ゼネコンに入社。希望の土木課にはいけず、思ったことをところ構わず口にしてしまう実直な性格ゆえ、関連会社に出向させられてしまう。そんなサクラの同期は、月村百合(橋本愛)、木島葵(新田真剣佑)、清水菊夫(竜星涼)、土井蓮太郎(岡山天音)。サクラを中心とした社会人の葛藤や歓喜が描かれていくのだが、2019年の現在。サクラは病院の意識のないまま、病院のベッドに寝ている−−−”

 このドラマは設定、演出が特徴的であることがスタート前に話題になった。第一話は2009年、第二話は2010年……と、新卒入社から32歳まで、5人の同期やその周辺の人々を一年一話でさかのぼっていく。今夜放送の第七話では2015年のサクラたちが登場する。普通のテレビドラマであれば、少しずつ歳を重ねていく様子が描かれていく、逆バージョンであるわけだ。

 テレビドラマは深夜ドラマやウエブ配信、CS放送も含めて数多の作品が日々放映されている。私はそのすべてを追っているオタクなのだけど、普通の人はそこまで見るわけがない。何かギミックがなければ視聴者は離れていく。今回の内容を聞いたときに、この演出も仕掛けの一環なのかと構えていた。

 それが視聴を始めると、毎週エンディング10分くらい前で泣いている。わりと泣き上戸だけど、それでも1作品で泣くのも珍しい。これは共有したい。グッとくるポイントを伝えたい。そんな気持ちでこの原稿を書き始めた。あなたは最近、泣いたことを覚えていますか?

 まずはこの作品の大テーマである“サクラの真っ直ぐさ”。社長、国家公務員、著名人でも臆することはない。そうやって社内でも一切、忖度をしないで発言を続けていたら、いつの間にか子会社に飛ばされている。このままだと解雇になる可能性もないわけではない。上に逆らえば、蹴られる。これがこの世の企業の現実だ。誰もが裏腹な気持ちに苛まれて仕事をしている。それらに耐えることも仕事のうちだというけれど、果たしてそうなのか。

 そしてマイペースと真っすぐさの間に揺れるサクラ。彼女が正しいのかどうか分からなくなってくる。彼女は、故郷に橋を掛けたいという夢を会社に賭けただけなのに。夢を叶えたいなら、自分を偽れしかないのは物悲しい。

 サクラの気持ちがすごくわかる。私も親の教育が良かったのか悪かったのかは謎だけれど、

「はっきりとモノを言いますよね」

「すごく気持ちよく発言しますね、小林さん」

「はっきりモノを言いすぎるから敵を作りやすいんだよ!」

 そんな風に言われてきた。さすがに40代なので手加減はできるようになったけれど、団体行動が向いていないと気づき、フリーランスの道を選んで『真っ直ぐにモノを言う』ことは、自らの防御策になった。だから泣くのか。

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本連載、著者の小林久乃さん初の著書
2019年11月29日発売

『結婚してもしなくても うるわしきかな人生』
小林久乃・著

 

未婚・既婚にこだわる時代はもう終わり!

現代を生きる私たちが、
清く❤正しく❤色っぽく❤
生きていくために必要なこと。
現代女性に捧げる!(新)読本!

義務教育に就職と集団活動を強いられてきた私たちの前に立ちはだかった人生の最終関門が“結婚”。出会って、付き合って、結婚して、と順番を考えていくと少なくとも3年近くはかかるビッグプランだ。「そんな難題をクリアできるのだろうか」と不安を抱えながら、婚活に乗り出したが…。
 

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小林久乃

こばやし ひさの

コラムニスト、編集者

出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(K Kベストセラーズ)にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊行)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーションなどを業とする、正々堂々の独身。最新情報はhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

 

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結婚してもしなくてもうるわしきかな人生
  • 小林久乃
  • 2019.11.30